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4. 「サシバエの防除薬・イベルメクチン」
 思い出と提言 牛乳の汚染を防げ!

 牛や馬の体を刺して血を吸う昆虫に、「サシバエ」と言う嫌われ者がいます。この昆虫の薬剤による防除で、血液ばかりでなく糞や尿に殺虫剤の成分が出ていることに気づきました。

 私は、奇抜な角や輝きを持つ「糞虫」に15歳の頃(1968年頃)からとても興味を持っていました。ファーブルの昆虫記には「フンコロガシ(聖タマコガネ)」が登場します。この仲間であるコガネムシ科の一群は「糞虫(フンチュウ)」と呼ばれ、動物達の排泄物である糞を牧場や野山で食べ、その糞に産卵をして世代を繰り返してきました。全国の牧場には、牛や馬を放牧するところが随所に見られます。ところが、最近はこれらの昆虫の分布地とその生息数に顕著な変化が起こっています。
 1993年頃と1997年頃の体験になります。
長野県を始め各地の牧場で、いつも見られたはずのコガネムシ達の姿が見られませんでした。でもハエやハエ類の幼虫はいたる所で見ることができます。さらに、ハエ類の幼虫や成虫を捕食する、シデムシやハネカクシ、ゴミムシの姿も見つけられず、不思議に思い考えました。「こんなにもたくさんある牛糞に、何があったんやろうか?」と。
 牧場や牛舎の飼育をされている方に話を聞きに行くと、「サシバエやなんかに刺されんかったですか?」と。「なぜですか?」と問い返すと、「サシバエが増えて、牛の血をいっぱい吸いに来るから牛がストレスでお乳を出さない。」と言われました。私が「困ったもんですね。」と言いました。すると、「今は便利になって塗り薬と飲み薬があって、ハエが寄りにくい。」と。また「塗り薬は牛に塗ってやらねばならんけれど、飲み薬は餌に一緒にまぜたらいいだけだから。血を吸った虫も死ぬからか、いつのまにか虫もおらんようになる。」などなど…。
「経口薬を飲ませると、血を吸った虫は死ぬ!」「薬は糞にも出るはず!だから食糞性のコガネムシやゴミムシまでもが壊滅的にいなくなったのか!」と。
 哺乳類の母乳は、乳腺から出ます。乳腺は血管につながっていて、元々は血液なのです。かつてPCB汚染による食品被害の時にも、母乳からPCBが検出されました。こんなことで、牛乳を飲む子供たちの命に害はないのでしょうか?
 私は1997年頃から学会がある度に、畜産、家畜、獣医学、製薬関連の様々な研究者にこのことを伝えることにしました。その結果、私の提言の後に研究が始まり、いくつもの論文が出たと知りました。
 問題の薬品はイベルメクチン(IVERMECTIN)と言います。便利に思える薬品も、害があっては意味がありません。昆虫の個体数の増減を見るとき、これからもいろいろと思いを巡らせて観察を続けようと考えています。
 2005.3.7 HOGA 保賀 昭雄
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